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アプリのスイッチの意味が分かりにくい? あるiPhoneアプリの解説記事を書くために、アプリ内の設定項目を確認していたところ、以前から気になりつつも放置していた疑問に筆者は直面した。
その疑問とは
「アプリやOSの設定画面などに使われるスイッチは、どちらがオン(ON)でどちらがオフ(OFF)か分かりにくいことがある。なぜ、分かりにくいのか?」
ということだ。
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基本的にiPhoneやAndroidの日本向けアプリではオン ・オフ の表現が用いられていることが多いようだが、中には上の画像のように | と ◯ の表現が用いられるアプリも存在する。また、Android端末でも機種によっては同様の表現が設定画面などで使われている。
はたして | と ◯ の表現でオンとオフの区別を自然に行うことができるのだろうか。以前から、筆者の心の中に、この小さな疑問がくすぶり続けていたのだ。
前提として確認しておくが、それぞれの記号の意味は
である。
文化の違いゆえなのか? そもそも記号の意味は文化によって異なる。
上の画像を見た場合、「 ◯(マル) だからオン」という意味に受け取る日本人が多いのではないだろうか。
しかし、◯が「オン」や「正解」などの肯定的意味を有するのは日本など限られた文化圏においてだけで、英語圏では逆に「不正解」などの否定的な意味を帯びてくるし、バツやチェックマークが「OK」などの肯定的意味を持ってくる。それならば、英語圏で製作されたアプリの中で、◯がオフを意味することは何となく理解できるのだが、そうすると | をチェックマークと見るのは難しいように思える。
なぜ、◯(マル) なのか?そして、なぜ | なのか?疑問は膨らむばかりだ。
周りの人に聞いてみた 筆者が、この疑問についてGoogle+などで質問してみたところ、三者三様のコメントが集まった。簡単に整理して紹介する。
Q1. | と ◯ の意味は?
回答 in/out(input/output)の I(アイ)と O(オー) 二進法の1と0 |が○を縦に2つ折りに閉じてる状態 ◯はマル、| は…バツではない何か なるほど、たしかに◯はマルではなく、アルファベットの O(オー) や 0(ゼロ) などを意味しているのかもしれない。どう見ても真円にしか見えない記号でも、アルファベットや数字をピクトグラム(絵文字)として抽象化したということであれば納得できる。 | についても同様だ。
Q2. オンとオフの区別をどのようにつけているか
では、回答者の皆さんはどのようにオンとオフの区別をつけているのだろうか。
回答 色が付いている方がオン イチとゼロで、イチがオン、ゼロがオフ IN=入る=オン、OUT=出る=オフ ドラえもんの手が伸びてたらオン、縮んてたらオフ。完璧!!? ※ドラえもんの手が伸び縮みするGIFアニメ(要クリック)Image may be NSFW. Clik here to view.
一部、珍回答があったものの、そういうものだと思えばそうなのだろうと自分を納得させられる気もする。ちなみに、筆者以外の編集部メンバー2名に聞いてみたところ、2人とも色が付いていればオンだと判断していた。
電源スイッチ・ボタンの記号の意味 ここまでで「この疑問はアプリだけではなく、その他のモノについても当てはまるよね?」と感じなかっただろうか。
その疑問はもっともな話だ。なぜなら、| と ◯ の記号は電気で動く機械全般に使用されるものだからだ。
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PCの主電源スイッチや電源タップなど、いたる所でこれらの記号を目にすることができるだろう。
なぜ、これらの記号をよく目にするのか。
答えはシンプル。実は、これらは国際的に標準化された記号 だからだ。
IECによる記号の標準化 IEC とは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)の略称。1906年創立の歴史ある団体で、電気工学や電子工学などの国際的な標準化団体だ。
ここで標準化された記号に、オン・オフを示す| と ◯ が含まれているわけだ(IEC 60417)。これで、かなり謎が解けてきた。
電源オン(IEC5007) Image may be NSFW. Clik here to view.
電源オフ(IEC5008) Image may be NSFW. Clik here to view.
電源オン・オフ(IEC5009) 電源オンと電源オフの記号を組み合わせたもの。
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電源スタンバイ(IEC5010) 電源オンと電源オフの記号を組み合わせたもの。PCやディスプレイなどでよく目にする記号だろう。
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なぜ、 | と ◯ なのか? これらの記号が国際的に標準化されたものであることは分かった。
しかし、なぜ記号として | と ◯ が採用されたのだろうか?
前述したように、記号の持つ意味は文化圏によって異なってくる。したがって、ある文化圏で特定の意味がある記号だから標準化記号として採用されたと考えるのは、根拠として弱いだろう。
また、それならば国際的な言語である英語の IN と OUT から採用されたのだろうか。しかし、いくら国際的な公用語とはいえ、英語という言語も特定の文化の一つの現われであり、標準化記号に採用するのは若干問題があるようにも思える。
それならば、数字の「1」と「0」をピクトグラムにしたものなのか。筆者が調べた限りでは、それが正解 のようだ。
IEC国際幹事の関喜和氏によれば
They are believed to standardized from logic 1 and 0.Stack Exchange
とのこと。
Q&Aサイト「Stack Exchange」のユーザによる情報であり、筆者も関氏に直接確認を取っていないため、不正確なものであることを念頭に置いたとしても、なるほどと納得できる根拠だと言える。
なぜならば、電気工学や電子工学の世界において「1」と「0」から連想されるものがバイナリ(二進数)だからだ。そして、簡単にいえば、デジタル情報は「1」と「0」の集合であり、「1」がオン、「0」がオフを意味する。
したがって、記号として採用された |(電源オン) と ◯(電源オフ) は、それぞれ数字の「1」と「0」に由来する と考えるのが合理的だろう。
記号とデザインとユーザビリティと iOS 7のロックスクリーン Image may be NSFW. Clik here to view.
本日(2013年6月19日)、iOS 7のロックスクリーンの分かりにくさを批判する以下の記事に出会った。
筆者は、スマートフォンにおいてデザインはユーザビリティ(使いやすさ)に奉仕すべきだと考えている。基本的にスマートフォンは道具であり、デザインはその道具を有効に利用するためのデザインであるべきだからだ。
たしかに、上記記事のとおり、新しいiOS 7のロックスクリーンはユーザビリティに欠けるように思える。特に、文字が左から右に流れていくように光る表現は、非常に誤解を招きやすいだろう。
しかし、現在の横にスライドしてロックを解除するデザインも、それが使いやすいと感じるとすれば、その理由は「右向きの矢印がへこみの部分に沿って右にスライドできそうだ」と認識できるからだ。そこには、「矢印」や「へこみ」の意味に対する共通理解があるからだ。操作の前提として「画面を触って操作できる」という共通理解も必要だろう。
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したがって、新しいロックスクリーンも一度使ってしまえば、新たな共通理解が形成されていくかもしれない。少なくとも筆者は、同様のスワイプ操作でAndroid端末のロックスクリーンを解除する動作に何ら違和感を覚えない。
もし、全てのユーザインタフェース(UI)が現実を模写したものでなければならないとすれば、根本的に新しいUIデザインは生まれようがない。さらに言えば、その現実はユーザによって異なるものだし、日々変化していくものでもある。
UIの一部として受け入れられるデザインが、スマートフォンにおける優れたデザインなのだろう。受け入れられるためには理解できなければならず、理解できなければ受け入れられらない……身も蓋もない話だが、卵が先か鶏が先か、という話なのかもしれない。
結局、アプリのスイッチは分かりやすいのか? iOS 7のロックスクリーンを一例として、デザインとユーザビリティについて簡単に私見を述べた。
そこで言いたかったことは、「共通の理解があれば、それは直感的なデザインとなる」という当たり前のことだ。
電機・通信の業界人や真のデジタルネイティブの間では、1と0がオンとオフを意味することは共通に理解されているのかもしれないが、一般的には共通の理解と言えるまで浸透しているとは言い難い(残念ながら、筆者はまだその域に達していない)。
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では、はたして、スイッチや電源ボタンのピクトグラムのデザインは分かりやすいのだろうか?電源スタンバイのデザインは、ユーザの間にかなり浸透しているように思えるが、電源オンと電源オフのデザインは意外と浸透していないのではないだろうか?
浸透していないのだとすれば、現時点では結果として分かりにくいデザインだった、ということになるだろう。
結論として言えるのは、国際的に標準化された記号である以上、ひとまずユーザ側でオン・オフの記号に慣れるしかないということだ。もし、現在、電源オンと電源オフの記号を見て、どちらがオンでどちらがオフか判別できないユーザが多いとしても、遠くない未来にこれらの記号を直感として認識できるユーザが大多数を占める日がやってくるのかもしれない。
追記:そう言えば… 昔から部屋の照明などに使われてきたスイッチに付いている縦棒のようなマークは、視覚障がい者向けに出っ張りが必要だったこと以外にも、電源オンの記号を表していたのだろうか。
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この記事をここまで読んでくれた人は、ぜひ身の回りのスイッチやボタンなど様々なUIにどのような記号が使われているのか気にしてみてほしい。何か新たな発見があるかもしれない。